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外部環境の変化がないと自ら変化することができない日本企業
2020年4月は日本の企業にとってテレワーク元年ともいえそうです。
多くの企業でテレワークが進んでいますが、それでもこのテレワークで業務を継続している企業は4割にとどまっているとのこと(4月8日現在)。
在宅勤務では業務が完結せず、紙の書類にハンコを捺すためだけに出社している人も多いそうです。比較的在宅勤務に馴染みやすいとされる財務関連の職種でもペーパーレス化が進まずこのような有り様。
完全なテレワークへの移行は難しいという現実が浮かび上がってきました。紙の文化がテレワーク普及の障害として浮き上がっているという現実。いまだにデジタル化ができていない企業が多いことが問題となっています。
そうはいってもこれま本気でテレワークを推進してこなかったことも事実。出社していれば新聞を読んでいようがゴルフの話をしていようが仕事をしたような気になっているという「出社信仰主義」。テレワークが日本の企業に浸透してこなかったというのも頷けます。
会社の経営者としても社員の忠誠心(という幻想ですが)を一定に保つためには他の世界を見せにくい『出社』という形態が都合が良かったのでしょう。
今回ばかりはそうも言ってられない状況ですね。ようやく外部環境の変化により重い腰を上げてテレワークに踏み切った会社も多いことでしょう。
なんだかんだ言っても日本の企業にテレワークは浸透していく
「働き方改革」と言いつつもイマイチ浸透してこなかったテレワークですが、望む望まざるにかかわらず5月以降もテレワークを継続する会社が増えていくと考えています。
今回強制的にテレワークを導入したことで、リスク回避の観点から、またこれまで議論されてきた働き方改革の観点からもテレワークを部分的に継続する会社も出てくることでしょう。
やむなし開始したことで今まで見えてこなかった問題点も浮き彫りになってきたはずです。
5Gの時代はすぐそこまで来ています。この時代にテレワークを開始しないでいつ実施するんだ? 世の中、そんな雰囲気になっていくものと想像しています。
そういう意味でもこの2020年4月はテレワークが一般的に浸透したという意味でテレワーク元年となるでしょう。
一般的な日本企業よりも更に遅れた建設業界
一方、テレワークが日本の会社に浸透してくると、テレワーク可能な業種とテレワークができない業種の間で「働きやすさ」に関する格差が広がってくることが予想されます。
建設業界、特に現場運営に関してはテレワークができない職種の代表格。
そうでなくとも長時間労働、残業、休日出勤、といった「働き方改革」が求められているのに他業種との格差は開くばかり。若者の建設業離れはますます加速するばかり。
若手に魅力的な職場環境を如何にして創造するか、が大きな課題となってきます。
建設業にテレワークは導入されるのか?
まず、無理でしょう。運送業、サービス業同様、人の手に頼る部分がまだ多い建設工事においてテレワークが導入されるとは考えにくい。
i-Constructionが進むとはいえ、まだまだ実証試験段階。今の段階では、単なるデモンストレーション、イメージアップのみに終わる可能性も大でしょうね。
一部の本支店勤務者には適用できたとしても現場工事を任された職員がテレワークをするというのはまだまだ先の話になりそうです。
そもそも現場のオヤジがSkypeやZoomを使いこなせるとは考えにくい(笑)。
建設業の場合、テレワークを部分的に導入するというのも経営者にとってみたら頭の痛いところ。
総務、財務、関連のいわゆる事務方はテレワーク、現場の第一線で働いている職員は今まで通りの過酷な労働環境。
これでは社内の格差がますます大きくなるのも無理はありません。
経営者が考えそうなことは「これまで通りみんな一緒に会社に出社しましょう」という超保守的で何も変わらない未来。
残念ながらこのような経営者が大半でしょうから建設業へのテレワーク普及は他業界から更に遅れをとることになります。
テレワークの問題点
そもそも名ばかりの成果主義がまかり通っている日本の企業において、成果のみを基準とした評価をすること自体そもそも不可能。
評価する際には周りとの調整や取り組み方を鑑みながら何となく妥協点を探して結論つけてきたというのが現状でしょう。成果がなくともそこに至るまでのプロセスを重視してきた会社も多いはず。
テレワークとなると成果以外の評価基準がなくなります。
保守的な日本の企業、特に建設業界においてはテレワークを導入することで成果主義の評価手法が新たな課題となるでしょう。
という訳で保守的な体制からの脱却はまだまだ先の建設業界
「働き方改革」「テレワーク」からは遠いところに位置する建設業界。
これまでと何ら変わらないビジネスモデルが今後、数十年と続いていくことでしょう。
若者を惹きつけておくことができるか?建設業は正念場に立たされています。