いつも同じ会社で同じ同僚と同じ仕事を何年も続けていると自分が置かれている状況が他人と比べてどんだけ違っているのかわからなくなってきます。
定期的に他の業界とのギャップについて認識する機会を設けることをおススメします。
目次
業界全体の改革は各社の小さな一歩から
普段から保守的な記事しか掲載していない土木學會誌に興味深い記事が掲載されていたので紹介したいと思います。
タイトルは「外からみた建設業界の働き方」。建設業界に対して日々感じていることが記載されており、同感させられる部分も多くありました。
語り手の方は000社以上の企業に対してコンサルティング実績をもち、残業を減らして業績を上げるコンサルティング手法に定評があるそうです。さらに残業を削減した企業では業績と出生率が向上しているとのこと。残業を減らすだけではなく出生率まで向上させてしまう手法に多くの建設会社も見習って欲しいなと思ってしまいました(笑)。
少子高齢化時代には男女協業、短時間勤務、多様性が重要
人口増加期には重工業の比率が高く、市場にはモノやサービスが充足していません。こうした社会では、筋力のある男性ばかりで働く、長時間働いて大量生産する、均質な人材をそろえる、ということが成功の条件に繋がります。一方、人口減少期にはこうした手法は通用せず、男女ともに短時間で働き、多様な人材を登用することが経済発展につながるのです。市場は均一な商品に商品に飽きているので、これまでにない視点による商品開発やサービスが求められます。このため、多様な発想のできる組織でなければいけません。
更に付け加えると、人口増加期と減少期において経済発展しやすい働き方は全く逆の発想が必要になるそうです。
人口増加期の働き方
- なるべく男性が働く
- なるべく長時間働く
- なるべく同じ条件の人を揃える
人口減少期の働き方
- なるべく男女ともに働く
- なるべく短時間で働く
- なるべく違う条件の人を揃える
とても興味深いですね。今急成長を遂げている業界、企業ではまさに人口減少期の働き方を実践して業績を伸ばしています。一方、建設業界はいまだに人口増加期の働き方をしていると思いませんか?あなたの会社はどうでしょう?
建設業者、発注者ともに意識改革が急務
現行の労働基準法では、建設業は36協定による時間外労働上限規制の適用除外となっていました。上限に余裕があったことにより発注者が短工期を示して終わり、ということが当たり前になっていました。受注者が人を増やす、労働時間を増やすことで対応してきたのが現状です。この結果、長時間労働に耐えかねた能力の高い人から先に、他業界に流出していきます。2019年4月から労働基準法が改正され、5年間の猶予期間があるにせよ労働時間の上限が罰則付きで設けられることになります。
たしかにメンタル疾患や過労自殺に関する意識は10年前とはだいぶ変わってきたと思います。でも上司は激動の人口増加期の働き方をしてきた世代です。意識改革が完全に浸透するまでにはあと10年くらいは必要ではないでしょうか? 意識改革が浸透するのが先か、若い人が他業界に流出していくのが先か。。。私は数年前に後者の選択をしました (笑)。
技術伝承におけるコミュニケーションの重要性
建設業は重層下請け構造で、一つのプロジェクトに多くの企業が関わることから、1社だけで働き方改革を進めるのは難しいでしょう。自分たちでできることから始めることが全体を変える第一歩に繋がります。建設関連企業のコンサルティングでは若者に元気がないことが気になります。若手とベテランの話し合いの中で「怒らないで、否定しないで、助けて、指導する」という要望がありました。こうしたコミュニケーションを通じて職場環境、モチベーションの向上を図ることが大事です。
コミュニケーションが需要なのはどこの世界でも同じ。それよりも語り手の方が指摘している、若者に元気がない、怒る、否定する、助けず、指導しない、上司がいることが問題だと思います。
持続的成果を考慮した改善が必要
例えばスナック菓子のカルビーでは社員に転勤拒否権を与えていることで有名です。「会社に必要なのは長時間労働ではなく、社員一人ひとりが豊かで魅力的であること。それが、企業が生きる方策だ。転勤を断られてもどうにかなる」という会長の言葉は印象的でした。いかに全体が持続的に効果を上げていくことができるか、リーダーが主導していく必要があります。
カルビーすげぇ!と思ってしまいました (笑)。
社員一人一人が豊かで魅力あることを考えている経営者の方ってどれくらいいるんでしょう?どちらかというと、会社が豊かで魅力的に見えるように社員をこき使う経営者のほうが多いような気も。。。
本社機能の中のムダの排除
如何に「内向きの無駄」、特に本社機能のなかにある無駄を排除できるかがポイントです。たとえば、大量の社内報告や資料づくり、何重もの稟議などです。経営層やリーダーたちの意識がこのようなところに向いてしまい、もっとの注力すべき現場の課題解決がおろそかになっているケースが多くみられます。本社のこうした無駄を徹底的に排除することによって、現場の働き方改革にエネルギーと人材を投入して頂く必要があります。
AI研究の第一人者である東京大学の松尾豊特任准教授は、「人間は余裕があると”部族ごっご”を始めてしまう生き物だ」とおっしゃっています。ゆとりのある時代には、その組織でしか通用せず、しかも序列をつけやすい仕事を自ら増やしていってしまうわけです。社内の資料作成が上手か、プレゼンが上手か。それによって部族にの階級を決め、各自がその階級を昇ることに多大なエネルギーを割くのです。今、生き残りをかけている時代に、部族内で争っている場合ではありません。
この点指摘が一番、腑に落ちました。本社や支店の人って なぜか現場の問題に真剣に向き合ってくれない、と感じたことありませんか? まさに『建設会社あるある』
無理や無駄が多い、そして、当の本人たちはその非効率な仕事のやり方に疑問を持つことはせずに現場の問題を吸い上げようとしない。悪循環の典型。
建設業界にはなんで他業種で手腕を発揮してきた経営者が参画することがないのでしょうか? ここはいっそオープンにしてがんじがらめのしきたりから解放して欲しいですね。どのみち自浄作用は期待できないでしょうから・・・
最後に…
如何でしょう?自分の会社に当てはまることもあったのではないでしょうか?
ちなみに。。。
このインタビューが行われたのは2018年9月25日。実際に土木學會誌に掲載されたのは2019年3月号です。何故、インタビューから掲載されるまで半年もかかるのでしょうか?
個人的にはこのあたりのスピード感のなさも、土木を取り巻く環境を象徴しているように思えてなりません。