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建設業界と学歴社会
就職売り手市場とはいえ、大手建設会社の採用は大学、大学院卒以上(一部、高専卒以上)というのはほとんどというところが多いのではないでしょうか? 60歳以上の人の中には今でも高校卒の人がいたりしますが、私が新入社員のころは60歳以上の大卒は珍しい部類に入っていました。ムダに高学歴な人を採用してきた結果、理想と現実(現場)のギャップに耐え切れず、建設業界を去っていくものも後を絶たないという状況です。
今回は建設業界と学歴社会という観点で書いてみたいと思います。
日本の教育とサラリーマンという生き方
日本の典型的な家庭で育った方であれば、小さい頃から、ちゃんと勉強して大学に入って大きな会社に入って安定した暮らしをしなさい、と言われて育ってきた方も多いのではないでしょうか? 私の親も大なり小なり同じようなことを口にしていたことを覚えています。
そもそも大きな会社に入って安定した暮らしをする、そのためにきちんと勉強して大学に入る、という一種のロールモデルのようなものは完全に破綻しているというのが現状でしょう。そもそも安定した会社なんてこの世の中に存在しません。(公務員を除く…) どんな大企業だって何かあれば一瞬で傾く世の中であることは何年か社会人として過ごしていくうちに気がついていくものでしょう。まだ、大企業で収入を得るという一辺倒の考え方も既に古い世代の考え方であると言わざるを得ませんね。実際、今の小学生のなりたい職業にはユーチューバーが堂々ランクインしているそうですし…
個人的にはコレはこれでいい傾向だと思っています。建設業のサラリーマンという世界に執着することなく、幅広く働き方を選べる社会になって欲しいですね。
新入社員時代のショッキングな出来事
私が新入社員の頃、大変ショッキングな出来事がありました。
同期のM君は名古屋の地下鉄現場の配属となりました。私と同じ年齢ということでウマも合い、週末にはよくお互いの現場について情報交換という名目でよく一緒に飲むという仲でした。ある日のこと、M君が朝礼前に現場の門の前の掃除をしていたところ、幼稚園に子供を送りに行くお母さんが通り過ぎたとのこと。そこまではいつもと同じ光景なのですが、その後、M君はこのお母さんから信じられない言葉が発せられるのを耳にしてしまいました。『しんちゃん、ちゃんと勉強しましょうね。ちゃんと勉強しないとあんな風になっちゃうよ…』
『・・・・・・・・・・』
ちなみにM君は東大大学院卒です。当然、しんちゃんのお母さんにはそんなことはわかりません。「所詮、俺たちを見る世間の目はそんなもんさ」とM君は笑っていましたがなんだかとってもバカにされたような気がしてムシャクシャしたことを覚えています。今であれば笑い話で流せますが、当時は若かったせいもあり私がその場にいたらお母さんを捕まえて説教していたかも知れません。そんなことしたって所長に怒られるだけなんですけどね…(笑;)
あれから15年たちました。あの時のしんちゃんがどのように育っていったかは知る由もありません。
大卒しか採用しない大手建設会社の実態
なぜか大手建設会社には高学歴の新入社員が多いという印象です。(私の世代ではありませんよ…) バブル崩壊後の失われた10年で買い手市場の状況が続いたことが一因かも知れませんが、純粋に現場運営を任される身としては、別に高学歴じゃなくってもいいんじゃない?ってのを常々感じていました。
大卒なんて現場じゃクソの役にもたたない!
大卒であろうが大学院卒であろうが、まず新入社員のやることは現場の安全管理、ごみ拾い、朝礼のラジオ体操、などなど…です。高度なことは何一つありませんでした。時たま本社から綺麗な作業着に身を包んだ管理職の人が来たりしましたが、我々は毎日文字通り泥だらけで現場の安全、進捗を管理していました。高学歴が必要なのは一部の本社の管理職やら設計、研究所の人たちだけでいいんじゃないの?後は高専卒でも高卒でもいいんじゃないか?その方が理想と現実のギャップに落胆しなくてもいいじゃん、って当時はホンキで思ったりしていました。
現場で大事なのは怒らせると直ぐに機嫌を損なう怖い職長さんだったりします。ここで必要なのは(どこでも必要なんでしょうけど…)柔軟なコミュニケーション能力であり、一から現場経験を積んでいくという貪欲な好奇心の持ち主でなければ務まらないと思います。
現場に来たら大学で勉強したことなんてクソの役にも立たないことは多くの人が実感してきた事実だと思います。
学閥争いは激しくないが派閥争いはそれなりにある
そんな建設会社の状況でしたから巷に耳にする学閥争いは殆どありませんでした。その代わり派閥争いみたいなものはありましたね、小さな会社なんですけどね… そんな中、出世のために、会社役員になるためにという名目で苦汁を舐めた上司を見ているうちに、将来性を見出せなくなってきた、というのが正直なところです。
そんなサラリーマン人生でいいですか?
小さい頃、お母さんのいうことをきちんと聞いてそれなりに勉強して大学に入って今の建設会社に入ったという方々へ質問です。
『今のサラリーマン生活は小さい頃の親に胸を張って自慢できる仕事ですか?』
親の幸せは自分の子供が自分らしく幸せに過ごしていることが一番の幸せであり、子供が安定した(と言われている)会社で酷使され疲弊して働くことを望んでいる親はいないことでしょう。
これまで一生懸命勉強して大学に入って、そして厳しい就職試験を突破して入社した会社。未練はありますか? 理想と現実が異なることは全然不思議なことではありません。
幸せになるために。。。それだけを考えて人生を歩んでいって欲しいと思います。